アイガー北壁

アイガー北壁

記録に残る限り、山の世界にヘルメットが登場したのは、1958年8月のことでした。舞台は、かのアイガー北壁(the North Face)。アイガー (Eiger、標高3,970m) は、スイスを代表する山です。
オーストリアというかウィーン出身の名アルピニスト、クルト・ディームベルガー(Kurt Diemberger, 1932-)とヴォルフガング・シュテファン(Wolfgang Stephan, )の2人が同壁の第15登に挑むに際して、落石から頭を守るために、登山史上初めてヘルメットを着用したのです。詳細は、クルトの著作 “THE KURT DIEMBERGER OMNIBUS”(Baton Wickes, London, 1991)に、ヘルメットをかぶった2人のモノクロ写真が収録されています(128ページ)ので、図書館にあったら借りるなりして見てみましょう。ここに掲載するには多分著作権の問題があるでしょうからやめておきます。この2人の活躍は当時広くメディアで報道されました。

アイガー北壁では1936年のトニ・クルツの悲劇や1957年のクラウディオ・コルティの遭難事故など多数の死者が出ていただけにヘルメットの必要性を強く認識したのかもしれません。

クルト・・ディームベルガー

クルト・・ディームベルガー

クルトとヴォルフガングの先駆的な試みは、瞬く間にアルプスの壁やヒマラヤの高峰を登るクライマーたちの圧倒的な支持を獲得し、ヘルメットは彼らの装備品一覧の中に確固とした地位を占めるにいたりました。
日本では、クライマー達がヘルメットを着用するようになったのは、1960年代初頭のことだと思われます。いくつかの山小屋でインタビューしたり、ベテラン登山家の方たちと話しての私の推量でしかないのですが。
今ではロッククライマー(英語ではAlpine climberと呼ぶのが普通らしい)だけでなく、落石がよくありそうな場所、滑落のリスクが高い場所などを通る、普通の登山者もヘルメットをかぶる必要性が認識されてきており、「トレッキングヘルメット」と呼ぶべき分野が登場してきています。

日本でも毎年300人前後の方たちが山で尊い命を亡くされています。落石、滑落等で頭を怪我すると致命傷になる可能性が高いだけに、自治体も「ヘルメット着用推奨山域」という形で、ヘルメットの着用を推奨してきています。もっともっと登山者の間でヘルメットを着用することが広く普及してほしいと考えております。

 
 
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青森県生まれ。二人の娘を持ち、千葉県浦安市在住。米国で通算7年ほど生活しました。夏山オンリーの登山で、冬はスキー派です。もっぱら小学生と中学生の娘を連れて、低山を中心に家族登山を楽しんでいます。登山の魅力をもっと世の中に伝えたいですね。 Twitterでは「登山の雑学(ravina)」(@ravina_zatsugak)というアカウントで、文字通り登山関係の雑学をつぶやいています。